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小宮 さえこ

ー イラストレーター

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Art Creative Illustlation

ときに町の人たちとアート制作

イラストレーター

小宮 さえこ

Komiya Saeko

INTERVIEW

イラストビジュアルをメインに活動するクリエイターが自分の今を作っている足元を大切にしながら、土地の人たちと共にパブリックアートを制作してきた活動の根底にある思いを聞いた。

『自分の足元をお花畑にしていく』そんな小さな活動から『Best Film Festival Poster of 2020』最優秀賞に至るまで

どんな場所でもひっそりと素敵な能力を持っている人たちがいる

― 大阪生まれ泉州育ち。現在3人の息子さんのシングルマザーだとお聞きしています。イラストレーター、デザイナー、市民参加型のパブリックアート制作を行うアーティストでもありながら、それらに関わるアートマネジメントも自ら行うなど多様な顔をお持ちの小宮さんですが、キャリアの始まりのお話を伺えますか。

 「小さな頃から絵を描くことが好きでしたが、じつは自分の好きなことを仕事にできるとはずっと思っていませんでした。好きなことを仕事にすると、たちまち苦しくしんどいことに変わってしまうと思っていました。

 

 自分が楽しめることを仕事にするきっかけになったのは離婚をしてシングルマザーになったことです。離婚の話をするとネガティブな印象になってしまうかもしれませんが、私にとってはとてもポジティブなプロセスだったと思っています。ただ当時は自分の事を責め、暗く悲しい世界に自ら落ちていました。今の時代にはそんな風に自分を責めることが多く起きているように思います。たまたま私の運が良かったのは「その暗い世界でしか見られないモノを見る時間になる」という転換ができたことです。それは本当にたまたまの幸運でしたが、今まで私に関わってくれた全ての存在のおかげだと思っています。

 

 離婚をしてたくさんのモノを失いましたが、それでも根強く残っているモノが自分にとって大切なモノだと思うことができた。とても有り難く感じています。意外と今持っているものだけで何とかなる。離婚をして環境が変わり、持っているもので何とか生きていかなければならない状況に追い込まれたことで、好きなことを自分の足もとを豊かにしていく事に使うのはとても自然だと感じました。」

〈事業内容〉

●装画、広告、ポスター、パンフレット、Webメディア等のイラストレーション

●グラフィック、キャラクター、ロゴマーク等のデザイン

●町の人たちとのアート制作

〈実績〉

The World『『Best Festival Poster of 2020』最優秀賞

ゆうちょマチオモイカレンダー2021,12月採用

わたしのマチオモイ帖10年をありがとう展キービジュアル制作

IZUMIパブリッククリエイション「ART GUSH」/和泉市

ごみばこアートガッシュ20作品/エコール・いずみ

『RAKUGAKI』“Art Collaboration”/ジョーシン和泉中央店

『和泉久保惣ミュージアムタウン』ロゴデザイン/和泉市

ストリートピアノ『Re:ピース』/2021/和泉市

Rethink my town with ART GUSH/2021

 ~和泉市×和泉市久保惣記念美術館×大阪教育大学×アーティスト×日本たばこ産業

ららぽーと和泉7周年キービジュアル制作/2021

ららぽーと和泉『AYUMINOSPRINGFESTA』

 ~キービジュアル制作&ワークショップアート制作/2022

いずみ市民生協まちの居場所プロジェクト黒板制作/2022

代表者 | 小宮さえこ

所在地 | 〒594-1156 大阪府和泉市

連絡先 | komiya.saeko@gmail.com 

掲載日 | 2022年3月

更新日 | 2022年3月22日 

「RAKUGAKI」ジョーシン和泉中央店より(2018)

「nothing else」(2018)

アートやクリエイティブ市場が整っていない地方のクリエイターだからフレキシブルで器用なのかもしれない

― いよいよ創作することを生業にしていくわけですね

「先ずは自分が自然な状態で、今持っているモノを活かして生きるにはどうしたらいいかを考えました。家事育児パートをしながら20代の頃はコンクールに参加するとだいたい何かしらの賞はいただいていて、地元で依頼があるので、フライヤー,キャラクター,ロゴマーク制作、美術展のDMデザイン等、自分のできるグラフィックデザインは経験していました。ただ、絵を描くことが自分の能力と言っても、経験の浅いただの人ですし、自分の絵がうまいとは今も思っていません。自分が心地よい世界観を表現することが、ただ楽しいというだけ。

 そんな私が息子達と関わりながら自分の能力を活かした仕事をするにはどうしたらいいか。そこから、さまざまな制作の場を子どもたちに体験してもらう「子どもアート教室PICARO」(※2020/3月に閉講しています)へと発展していきました。」

「RAKUGAKI」除幕式より(2018)

町の人たちとのパブリックなアート制作を行うきっかけになったのは教室の子どもたちの思い出になるようなアート企画

「私が幼少期に祖父母と過ごした一軒家が空き家の状態になっていたこともあり、子どもアート教室を開講しようと決めました。絵画の基本を大学や専門学校で学んでいないというコンプレックスのある自分にできることは何か、私自身が子ども達から学び、子どもたちに還元できる事は何か。そう考えたときに、意外とできることがあると感じました。

 

 教室では自分が繋がっているプロのアーティストさんやクリエイターさんとの交流からはじめ、自分たちの育っている街に目をむけ、子どもたちの今が思い出になるようなアート企画を試みました。

 

 街を走るキッチンカーへのペイントや、解体される庁舎に足場を組んだ大がかりなペイント、子どもたちが普段足を運ぶお店の壁面に作品を施す等、色々な体験を沢山の人と共にチャレンジさせていただきました。街のパブリッククリエイション「ART GUSH」には、子どもたちと共にプロのクリエイターさんたちに交じって、30作品のひとつとして参加。自分自身や自分の足元の大切さを感じながらも、自分以外の世界観や技術に触れることがこの教室の持ち味となりました。」

子どもアート教室PIARO制作風景より(2018)

ART GUSH「picaro GUSH 21」(2019)
青銅器/陶磁器/国宝「青磁 鳳凰耳花生 銘万声」リライト作品

少女時代に抱いた幼い幻想。根幹にあるのはそんなシンプルなこと

「和泉市に住む普通のシングルマザーでフリーのイラストレーターの私が、沢山仕事をこなすことや、遠くに足を運ぶことがなかなかできない中で、教室の子どもたちの見える世界が少しでも広がればという想いがきっかけで少しずつ色々な分野の方達との交流が始まりました。その中でも大きな出会いがいくつかあります。   

『わたしのマチオモイ帖』というコンテンツとの出会いもそのひとつ。日本全国のプロのクリエイターが、自分にとって大切な町、ふるさとの町、学生時代を過ごした町や、今暮らす町など、各地の町で育まれた「わたしだけの思い」を小冊子や映像作品にして紹介する展覧会活動。2011年の震災の年に作られた故郷を思う一冊から始まりました。

マチオモイ帖を作る工程は、わたしの今を育ててくれた、街や人やコトやモノを大切にする作業になっていたと感じます。この出会いがきっかけで、私自身の今までの活動の根幹を〈自分の足元をお花畑にしていく〉と表現するようになりました。」

わたしのマチオモイ帖10年をありがとう展
KITTE東京シティアイよりキービジュアル制作(2021)

地方のクリエイターが自分の足元のためにできること

「地元和泉市で活動している太鼓チーム(いずみ太鼓 皷聖泉)との出会い。この出会いは被災地への心の距離を近くしてくれました。文化芸術活動として太鼓演奏をしながらも、その活動の中には青少年の育成の志がある事を日々感じさせてもらっています。毎年各所の被災地支援をし、2020年には豪雨災害のあった熊本県球磨村へのボランティアに私も同行させてもらいました。

 震災以降、日々量産される「ボランティア」や「チャリティー」という言葉。表面だけで使われる事も多いと感じる昨今、泥臭く真剣な活動をしている人たちがこんなにも身近にいる事を知りました。誰かの足元を豊かにする手助けができるという事は、自分の足元を豊かにする事に繋がっている。体験を通してとても大切なことを教えてもらいました。そして生まれたのが、5人の青年のそれぞれの思いをひとつに紡いだ冊子『いずみ帖』です。クリエイターとして何かお返しがしたいという衝動を形にした大切な作品。」

『いずみ帖』熊本豪雨災害被災地の様子より球磨村,青井阿蘇神社(2020)

近所のおばあちゃんもおじいちゃんも生きる時代が違ったらアーティストになっていたのではないかと思うことがある

 「門真フィルムコミッション」との出会いは、自分なりの日々の小さな活動が大きな実を結ぶこともあるという事を経験させてもらいました。初めてお会いした時、現場で愉しんで撮影されている様子がとても印象に残った方々でした。仕事をこんな風に楽しめる大人がいる事にとても興味が湧き、近くでこの人たちを見てみたいとコミュニケーションをとるようになりました。

 

そんな中でお声かけいただいたのが映画館のない町で行わる『門真国際映画祭』のポスタービジュアル制作でした。

出品される自由な映画作品ひとつひとつを大事に尊重する門真国際映画祭と同じく。制作するポスタービジュアルの世界観を自由に表現することを許されました。与えられたガイドラインはポスターのサイズの指示のみ。与えられるガイドラインが少ないことが私に愛と責任を持たせてくれました。

 

そして、2020年に制作したポスタービジュアルの発表をしてから数か月。ヨーロッパ圏から連絡があり、世界の約10000カ所で行われる映画祭のポスタービジュアルの中から私が制作させてもらった門真国際映画祭のポスタービジュアルがベストテンに選ばれ、これから88ヶ国で投票が始まり最優秀賞を選ぶとのことでした。」

「思いもかけないことでした。ハリウッドスターが写っているポスタービジュアルに並んで、自分の作品がある。和泉市に住む普通のシングルマザーにも、たまにこんなことが起きます。その年のクリスマスの日に最優秀賞を受賞したと報告がありました。日々自分らしく生きているとこんなご褒美もあるものなのだと感じた大切な出来事です。

 

私にとってArt、Creative、Illustration、ときに町の人たちとアート制作をすることは私自身の足元をお花畑にするツールだと今は捉えています。その上で、人と関わることがとても重要だと私が感じているのは、自分以外の存在を感じることで自分と(共通する部分)や(違う部分)に触れ、自分の魂のカタチを少しずつ確かめることに繋がってる気がするから、かもしれません」

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